08



「遊蛇海流ですって?」
「ええたぶん!」
ノースやイーストにもうねる蛇の海流と呼ばれる物はある。しかしここグランドラインの遊蛇海流の規模は桁が違うと思い知らされた。遠い物は数100km飛ばされてしまうし、小振りの物なら数10m上空に連れて行かれてすぐに真下に落下する。それが混在しているのだから流れを見誤るととんでもないことになる。
「なんでも良いぞーーー!!」
「すげーーー!!遊園地みてぇだ!」
船長が大はしゃぎなのはいつもと変わりないし規模次第で皆の顔色の比率の青さが増すだけだ。


「飴だ!!」
「飴が降ってきた!!」
「こいつ酸っぱい飴だ!」
「これはシュワッとするぞ!!」
「丸虹模様の飴だ!!」
甲板に降った飴を皆で集める。ルフィが伸ばした舌で受け止めても独り占めだしロビンのネットは痛いから嫌だとご本人の弁。空から降ってくる奴が皆に当たると痛いからとブルックが用意したのは黒い傘だったが大きな穴が空いていてそれに大爆笑した。皆受け入れるのが早過ぎるくらい。突然一緒に笑っていたナミが頭を抱えた。
「どうやったら空から飴が降ってくるのよ!?おかしいじゃない!」
「オタマジャクシが降るくらいですもの。気にしちゃ駄目よ。」
「それ新聞のガセネタでしょ!?」
彼女の手には久しぶりのクー便が。これも開いて飴を受ける。
「ナミーー!」
チョッパーの声にふり向けばナミの口に甘いとろける飴が放り込まれた。
「あんまぁ〜〜い」
「今怒ってたの誰だよ!」
ナミの目もとろけてる。気持ちよすぎるらしい笑顔にウソップが突っ込んだ。
「え?誰が怒ってたんですって?そんな暇があったら集めなさいよ。お宝みたいなもんじゃない!」
ナミは頬を膨らませて笑い、指はウソップの手に抱えた飴に伸びてる。






◎ただ声が聞きたいだけ

古城のベッドはキィキィ軋む。
夜になったら窓を開けて貰った。夜空には星が。
オレにはどれがどれだかいくら教わっても分からなかった。


お前は今ルフィと一緒か?ちゃんと笑ってるか?好きなお宝は守れてるか?
最後に聞いたのは飛ばされる時。大気の速度で歪んで消えた。
声には遠く。果てしなく遠く。


back // next