04


「ではーー競技の条件をもう一度ーー」
甲板でウソップが音頭を取って復唱した。
「チャンスは一回!」『チャンスは一回!』
「ゾロから一本!」『ゾロから一本!』
「勝者はみかん!」『勝者は蜜柑!!』
「おいおいおめぇらわかってんのか?トレーニング中のアイツなんて下手すりゃ加減が効かなくて瞬殺されるぞ。お嬢ちゃんも良く許したな。」
フランキーはどちらかというと心配を含んで脇の工具箱を持ち上げた。
「だーいじょうぶっ!ゾロも気配を読む訓練になるって言ってたしっ!」
根拠なんて全然無いルフィの笑顔でゲームは開始。

ルール無用トレーニング中のゾロに一本入れた者の勝ち。ハントゲームの獲物が超大型肉食獣なだけ。



最初に討ち死んだウソップはそうそうにゲームを離脱してスケッチブックを持ち出した。フランキーは急遽誰かの作った傷の補修作業に付き不参加。ブルックは骨なのにたんこぶを作り、ルフィはは相打ちでノーカウント。そして本人も驚くことに、いつものタヌキ顔で側に寄ったチョッパーが獣系に変身と同時に飛び込んだら何かに気を取られていたゾロの反応が一瞬遅れて、奇跡の一本。勝者馴鹿。最後のサンジは夕飯の準備で時間切れ。

「やったーーーーーーー!!!オレ蜜柑貰えるのか?ナミの?本当に良いのか??」
飛び上がって喜んだチョッパーの真横でウソップが固まっていた。
さっきのチョッパーの飛び込みの時に静かに開いたドアから視線を感じる。
ナミが黙ってウソップを見て・・・・・・・・何も言わずにバタリと扉を閉めた。
「ウソップ?おい!?固まって動いてないぞ!医者〜〜〜〜〜〜!!」
蜜柑をネタに出した者の呪いと診断したのは患者の方。





◎その沈黙の意味は

「998…999…」
視線を感じた。
いっつも五月蠅い女が下を向いたまま。
何も考えずにじっと観てたらゆっくりと顔を上げ、伏していた睫毛を同じくゆっくり開けた
そのままじっと俺を観た。

そのつもりのお誘いかと振ってたダンベルを下に置こうとしたらいきなりすいっとその場からいなくなった。
なんだ肩すかしかと首を傾げてもう一度ダンベルを手に取った。ふと空の色に気がついた。
「なんだもうこんな時間か」
甲板は夕日の色に染まって更に藍を深めてゆく。



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