苦難 |
ばなな平井。さん |
「ゾロは忍耐力あるよなー。」 、、、、、、、、、、、、、。 ゾロの手が止まる。 キッチンへ入ろうとした瞬間、チョッパーの台詞が耳に飛び込んできた。 自分の話題をしている時に入るのはどうにも居心地が良くない。 そんなゾロをお構い無しに、中では話が続けられる。 「忍耐力の欠如は、失敗の最大原因って言われてるんだ。」 「チョッパー、よく知ってるわね。」 「うん、本はよく読むからな。」 「えらいえらい。」 「よよよ止せよぅ、嬉しくねえぞ!!」 中に居るのはチョッパーとナミ。 おそらくサンジとウソップもいるはずだ。 「ケっ。あのクソ野郎が我慢強いって?あいつはただの筋肉バカだね。」 「でもよう、確かにあんな風に朝から晩までトレーニングなんて出来ねえよ。」 サンジの言葉に反応したのはウソップ。 やはりルフィとロビン以外はキッチンにいるようだ。 会話は続く。 「だろ?やっぱり凄いよ。」 「でもよ、チョッパー。」 「何だ?ウソップ。」 「確かにゾロは忍耐力がある。でも俺様には勝てねぇな。」 「本当か?!」 ウソップがお得意の嘘をつきはじめた。 きっと純真なチョッパーは、目を輝かせながら聞き惚れていることだろう。 入り時だな、、、、。 思って、改めてノブに手をかける。が、 「ねえ。ゾロって、本当に忍耐力あるのかしら?」 ナミがまた話を蒸し返した。 「流石ナミさん!やっぱり貴方となら理解しあえると思っていましたよ!」 「忍耐、、、、、忍耐、か。」 「え、、、。ナミは、そう思わないのか?」 「うーん、、、、、、。」 「言ったろチョッパー。あいつはただの筋肉バカだ。」 「そんなことないぞ!!ゾロは凄いぞ!!」 「俺も、凄いと思うけどな。」 「はっ!お前ら二人とも何騙されてるんだよ。あいつは筋、」 「わかった!!」 サンジの台詞を遮り、突如ナミが大声をあげる。 「ナ、ナミさん?」 「わかったわ!あいつは忍耐強いのよ!!そうよ、凄いのよ!!」 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。 一同、思わず石化する。 扉の外に居るゾロでさえ、ナミの発言に思い切り動揺した。 あのナミが。 口を開けば悪口や我侭しか浴びせないあのナミが、 ゾロを素直に褒め称えているのだ。 ナミに何かあったのか?! その場に居る誰しもが、ナミの体を心配した。 「ナ、ナミ?具合でも、」 「いいこと?チョッパー。」 チョッパーがナミの額に手を当てようとするが、 なにやら立ち上がり必死に熱弁し始め、チョッパーの手は宙を彷徨う。 「そもそも忍耐って、辛いことして「苦しい苦しい」言ってたんじゃ、駄目なのよ。 それじゃあ本当の忍耐にはならないわ。辛い事って、どうしたって続けられるものじゃないしね。」 「、、、、、辛いトレーニング続けられるゾロは、忍耐力があるってことだろう?」 チョッパーが恐る恐る口を挟む。 「ええ、そうよ。あいつは絶対に「本当の忍耐」ってヤツを理解しきってるのよ!!」 「忍耐には、嘘と本当があるのか?」 「チョッパー。本当の忍耐ってのは、周りから苦しみに見えることでも、 喜んで受け止め、苦しみを苦しみと感じない事を言うのよ。 本人が「辛い・苦しい」という事の見方を変えて、 己の中で徐々に楽しいものと変化させていくものなのよ。」 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。 一同、再び石化する。 扉の外に居るゾロも、また然り。 「あの、、ナミさん?」 そんな中、口を開いたのはサンジ。 「なあに?サンジ君。」 「その理論を聞いていると、クソ腹巻はマゾヒズムな気がしてくるんですが、、、?」 「うん。絶対そうよ。普通あんなバカみたいに鍛錬出来ないわよ。」 ナミのその言葉を聞いて、ゾロはそっと扉の前から離れる。 「ナミの奴、、、、、。」 何となく怒りたいものの、素直にキッチンに入れず、船尾へ向かう。 流石に、今トレーニングする気にはならない。 きっと今後、自分がトレーニングする度に、仲間は今日の会話を思い出すのだろう。 そして忍耐という言葉の真意を思い出し、『ゾロはマゾヒズム。』という ゾロにとっては迷惑極まりない思いを抱くのだろう。 何となく、何となく無性に空しくなり、一人膝を抱えて座り込む。 暫くして、 「サンジー!!腹減ったー!!」 ルフィの騒がしい声が聞こえてきた。 「おう、丁度おやつ出来たぞ。」 「今日はチェリーパイかーっ!!」 「おーい、マゾ野郎。手前も食、」 「それで呼ぶんじゃねえっ!!」 ゾロの苦難は始まったばかり。 |
<御礼> 最高!!!! こんな困り方をするゾロはとても好みです!! この後船内でずっとくすくす笑いが絶えなかったんだろうと思うと益々(嬉) どっちが好みと聞かれたらこっちかなぁ?向こうも切なくてほろりなんですけれど。 けど。どっちも貰って良いとおっしゃるので一回のキリ番で二匹も大魚を戴いています!! シリアスで裏な二匹目はこちら |
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