Fly high 第1章
女が女であり続けたいと願う心
そう思うのは
なにも彼女一人だけではないこと
女として生まれたからには
五感全てでそれを感じたい
そんな願望を女が持つことは
神が与えた悪戯なのだろうか
それとも・・・
それは女のエゴというものなのだろうか・・・
「明日上陸するの?」
ナミはゾロの武骨で太い指に
その折れそうなぐらい繊細な指から伝わる互いの熱を
小さな幸せのようにゆっくりと絡めた
「こいつらを出してぇからな」
首に回している手でオレンジ色をした柔らかい髪を梳きながら
傍らに置いてある3本の刀を顎でしゃくると
胸の中で仔猫のように甘えているナミの髪に顔を埋め見下ろす
ほのかに甘い香りが鼻腔をくすぐる
「お前は?」
「私は残るわ」
絡めている指に興味があるのか
ナミはゾロの顔を見ることもなく弄び続ける。
そんな彼女を見つめた視線の先に彼女の美しさを彩るまつげが
以外にも長いことに彼を気づいた。
不意にこみ上げてくる
狂おしいほどの
愛しさ
言葉に出来ないほどの
切なさ
傍にいることの
心強さ
突き動かされるよう抱きかかえている
しなやかな彼女の裸体を
その腕へと引き寄せる
「お前1人になるぞ」
力の込められた腕。
冷静な言葉尻とは裏腹に。
「なに?」
彼女は、絡めていた指を解くと上目ずかいでゾロを覗き見ると
クスリと口元に笑みを浮かべた
「心配してくれてるの?」
「あたりまえだろ」
視線を戻し彼の胸に刻まれている
滑らかになった大きな傷を指でなぞりながら
くすくすと可笑しそうな笑い顔から安らぎの微笑みへと変わる。
向きになった、彼の面をその瞳に確実に焼きつけて。
「大丈夫よ 治安は安定している街だから」
「まあ てめぇは殺しても死ぬような女じゃねぇっか」
「失礼ね 人をあんた呼ばわりしないでよね」
笑った瞳で睨みつける
ぷくりと膨らませた彼女の張りのある頬をやさしく撫でさする。
そんな彼を見ながら
頭を掠めゆく彼女が願う密かな想い。
「ねぇ もし私が誰かに殺されるような形で死んだらあんたどうする?」
数秒の沈黙が、情事の後のけだるい雰囲気を支配する
「ねぇてば」
「おまえを死なせたりはしねぇよ」
相変らずぶっきらぼうで答えにならない答えが返ってきても
「相手を殺す?」
「だろーな相手を殺ったところでお前が戻ってくるわけじゃねぇけどな」
「その後は?」
――─ その後もなにもナミを失う事など
「じゃあ聞くがお前はどうなんだ?俺は剣士として最強になると決めた時から
とっくに命は捨ててるぜ」
腕を伸ばし両手で優しくゾロの頬を包み込むと
その言葉に驚きのいろ1つも見せにず穏やかに微笑みを
死に急ぐ男へと向ける
「フフフ 死ぬつもりなんかないくせに」
「答えになってねぇじゃねぇかよ
ったく・・・お前はどこま俺を引っ掻きまわせば気が済むんだよ」
頬に感じる彼女の肌の冷たさ
その冷たさの中にあるナミの髪の色にも似た。
─── 地獄には冷たさはあっても
この暖かさはねぇだろうな
頬に添えられているナミの左手を取ると 空気の境界線上で
重なり合う掌
細い指へとそっと口付けを落としてゆく
─── ねえ?ゾロ
私はね・・・・
あんたに殺されて死にたいの
薬指を噛み傷をつけながら
to be continue・・・
まゆさんに開設祝いとして正式に頂きました!!
この方のサイトに連載中、次の展開への期待にドキドキしながら読んでいました。
その名作をぽんとうちなぞに下さるなんて・・・。
ありがとう!!
次々続くナミの揺れる心理、ゾロの翻弄される心理
そして周囲のあの人の心理をその切なさを心ゆくまで堪能して下さい。
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