『夢』





「はっっ」
まだ視界がぼやけて何も見えない。
上下の感覚もなく、宙に浮いている気さえしてくる。
ここはいったいどこ?
いまはいつ?

最初、無音の耳に音を感じるまで時間がかかった。
波が船体にぶつかっている音が聞こえた。
(此処は船の上……)

視界も次第に像を結びはっきりする。
ゴーイングメリー号の船室だ。天井が見えた。
いつもの女性の部屋の天井模様にほっとする。


力が抜けた。

今はアラバスタに向かう途中。
エターナルポーズを手に入れることもできたし、ナミさんの病気も殆ど完治したらしい。
食料の問題は多少有るけれど、もうすぐ着くことが出来る。アラバスタに!

国はまだ滅んでいない。
あんなに辛い思いは絶対にしない。
絶対にさせない。
さっきのが夢で良かった。
心からほっとした。
溜息とともに肩の力は抜けた。





「やっと起きたな。」
枕元でしししと笑う少年がいた。枕元においてある椅子に腰だけ落とした形で座り、両手をぶらぶら前の方に下げている。壁の方を向いて寝ていたから気が付かなかったの?
いえ、あまりにリアルな夢と現実が混乱していて気配に気が付かなかった。
自分の背後にいきなり現れたこの少年の夢を見ていたはず……。


「ルフィ・・さん?」
大きく開いた口から白い歯が覗く。
「おう!」
彼の闇色の瞳を見ているとまた夢が夢でなかったように混乱してくる。

「まだアラバスタに着いてないですよね。」
「ん、着いてない。」
「で、此処はナミさんの部屋…。」
「おう!ナミの部屋だ。」
「ナミさんは・・?」
「ナミは航路の狂い方が気になるって言って上に行った。当分帰って来れないってさ。」

いつものとぼけたオウム返しの言葉ばかりが帰ってきた。

「なんで此処に?」
「腹が減ったから。」

いつものこととは言え…。笑う笑顔の無邪気さと重なり脱力感が否めない。

「?キッチンは此処じゃないですよ。」
「わかってる。」
「それにもう食料なんて無いですし・・。」


「喰う物って飯だけじゃねぇだろ?」
「?」


覗き込まれるように大きな瞳が近付いてくる。自分の心臓の跳ね方が夢の中と同じことに気が付き更に動悸を打つ。耳の中に心臓が出来たように音が響いて周囲の音が聞き取れなくなる。
もう…だめ…。
目を瞑りかけたその時にルフィはすっと離れた。頭に手をやって触れそうに近い帽子のつばを下げて、後ろ手に帽子の下で手を組んで私の方を向いていた。


「まあいいや。アラバスタに着いてクロコダイルをぶっ飛ばしたらきちんと喰わせろよ。」
そう言う意味か。力が抜ける。   
少し残念な気がしているのは気のせい?
「着いたら食べ物屋さんがあるわ。アラバスタのご飯も美味しいのよ。」
でもクスリと笑いながら指導口調が言葉に乗る。


「そう言う意味じゃねえ。」

「夢だと思って安心してんじゃねぇぞ。喰っていいのは俺だけだ。」

「!!!」






本当に今はアラバスタに向かう途中なのだろうか。
何処までが夢だったんだろう。
混乱したまま確かめる事も出来ずにただ震えが走って
背中を見せながら立ち去るルフィを見ていた。。







"which is the REAL ending?"








BACK TO REAL? or DREAM?