宴の後

みつるさん



「猫の声だと思ったんだって」


 汚れそうな気がするから、とまったく普段着だったナミのTシャツを頭から裏返しに脱がせている時に、少し酔って舌足らずな声が言った。
「なにが」
 子供のように手を万歳の形に上げさせて、そのままTシャツを引っ張り引っこ抜いて床に投げる。部屋の空気が乱れた拍子に、嗅いだことのない香りがナミから漂ってきた。
「ノジコ、が、あたしを」
 下着がいつも黒なのは何か縁起担ぎでもしてるのかときいた時に、いつどんな出会いがあるかわからないし常に勝負下着なの、と平然と言ったので頭に来て、あの時はだいぶ無茶をした。
「見つけたときに」
 背中のホックを外すと、押し込められていた柔らかい肉がぷるんと震えて少し広がった。大きさの割に色のついた部分は小さく、その真ん中はいつも、俺の愛撫にすぐに応えて固くなる。
「ああ…似てるよな、赤ん坊の声と」
 先に全部脱がせようとスカートにかけた手を退けて、ナミが俺のシャツをたくしあげた。先ほどのナミ同様、手を上に伸ばして脱がせられるに任せる。
「本当の誕生日は分からないから、その…」
 んしょ、と声をかけてシャツを引っ張るナミに引き摺られるように、俺の身体はナナメ前に傾いた。目の前を覆う白いシャツが、ぐいぐいと引っ張られてようやく腕から抜ける。勢いでベッドに仰向けに転がったナミにそのまま覆い被さって、頬に小さくキスを繰り返しながらスカートの止め具を外した。
「その日が誕生日になって、ノジコには悪かったような」
 新しい香りに新しい下着で、特別な日に中を装うのがコイツらしい。他の奴らには気付かせないことをするのは俺に対するサービスなのかとも思うが、ナミはきっと自分が気持ち良くしていたいだけだと言うだろう。
「なんで悪いんだよ」
 スカートをずらしてちらりと見ると、やはり黒のレースで上とお揃いらしい。どれもこれも黒なので見分けをつけるのは正直難しいが、俺に下着姿を眺めて喜ぶ趣味がないのはナミも承知のことだから、誉めなくてもいい。だからといって気付いていないわけではないと、いつか言ってやろうと思っている。
「故郷が壊されて実の親が死んだ日よ」
 少し腰を上げて協力するナミの足から、下着もろともスカートを抜き去った。起き上がって俺のズボンに手を掛けようとするのでそれは封じて、今日はじめてのキスをする。ぺたぺたする感触は、きっとあのリップグロスとかいうやつだろう。綺麗に舐めとってやる。口紅を舐めるのはあまり良くないんだといつかナミに言われたが、邪魔なんだから仕方がない。
「そんな日にハッピーバースデーなんて毎年毎年」
 しかも欠かさずお祝してくれたのよ、と言うナミの耳から攻め始めた。ゆっくり、今日は徹底的に優しくしようと決めていた。吐息混じりに漏らす声が、コイツが見かけよりも酔っていることを教える。繰り言を呟くのもそのせいだろう。
「今日はどうしてるのかな…」
 寂しがってないといいけど、などと言うので、寂しいのはお前の方なんじゃないのか?と返した。そうかもね、と微笑う目の縁に口接けて、手では足を広げて身体を割り込ませた。ナミの手が俺の身体を撫でた。
「声出せよ、猫みたいに」
 首から胸へ舌を滑らせて、手だけでは満足しない、贅沢を覚えた柔らかな肉を愛しはじめる。
「見つけてやるから」
 何度抱いても、抱く度に愛しい身体。それはコイツを形作る要素のひとつでしかないが、全てを愛していると告げるには、俺の不器用さが邪魔をする。
「離さねェから」
 伝わっていると思うのは間違いじゃない。俺の髪を掴む手が一度だけ震えて、普段は抑えがちな甘い声で鳴き始めた。

 本当は鳴き声など必要ない。
 いつだって側にいる、と告げる機会はいつ来るだろう。

 そんなことをちらりと思いながら、俺は行為に没頭していった。




END


01'ナミ祭にみつるさんの作品が載せてあり、
悦に入りながら読んでいて最後にひっくり返りました。
ナミの日にサイト開設するといったら・・頂いてしまいました!
みつるさんのファンの方々!
ごめんなさい!でも嬉しいです!!
この感動は誰もが共感してくれると思います!!



みつるさんのボディートークなゾロに心から震えて共感します。
告げる機会は・・と考えてはみてもきっと言わないゾロが・・・良すぎます。
喰われるための準備は上々。
美味しく仕上げたナミをどうぞ喰っちゃって鳴かせて下さい!!

本当にありがとうございました!!



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