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【斬】
「おーい前に列車が見えた!!!」
先に見えた列車ならばパッフィングトムだ。
慌てて皆が次々と車外に飛び出していく脇でバーさんは悠然と瓶を片手に。
「バーさんブレーキは!!?」「きくわけねーらろ何とかしなァ んががが!!」
ニャーニャー騒いでるちび二人の横で何も考えていないいつもの赤ら顔。
アクアラグナは奴らのおかげでどうにか超えたが目的の列車をどう捕まえる?
このあたりは大工の俺たちの仕事だろう。
ところがそれはただの障害物だった。
排除しなければあいつ等には届かない。
外れない車体の解体のポイントと時間が俺の頭の中で組み立てられていく。
俺の手で間に合うだろうか?
ままよと車外に飛び出そうと窓枠に足をかけたこのどたばたの一瞬、
横で一人だけ涼しげな顔をした海賊娘のせせら笑いが癪に障ったのは何故だろう。
「ハレンチ娘!こんな時に何笑ってんだ!このスピードでぶつかったらみんなお陀仏なんだぞ!」
「そんなこと考えるまでもない。斬るわよ。」
男の中での着替えに動じないのと同じスタンスの静かな声だった。
「ああ?」
「ルフィもそう言うわ。」
「おい!常識で考えろ何言って・・・!」
「今のアイツに斬れないモノなんかないもの。」
両手を組んで色の白い猫が日溜まりでのびをするような優雅ともとれる獰猛な余裕。
堂々と拡げられたへそよりも揺るがない誇らしげな信頼に目を奪われたのは
それが初めてだったかもしれない。
『心奪われた時には他人の物』 |