秋水
久方ぶりに生気を感じた。 とは言っても私に時間の観念などない。 あるのは私を使い、私の力を引き出す
つはものの魂。 ついぞ今まではその魂の残滓のような者と共にいた。 力無き者に従う意はなく。 心無き者と共にいる意もない。 我を使うに価しない相手には我は常に我が意を閉じる。 そのような者などそういるはずもなく
生気は緑に燃えなす闘気だ。 温度を感じないようなほの暗い色彩をして。 それで居て熱い。 燃えさかっているのに無音で。 大きく広がるよりは静かに深く研ぎ澄まされている。
我が身は鋼の黒。 踊る身の文様は大逆丁字。 刀師の魂が我を表す文様を織りなして我はそうなった。 かつては華やぎたる黒とも賞された。
我が名は秋水。 日本刀の最たる物。 美称と呼び倣わせ。 己は我を使うに足る者か?ではその証を示せ。
我こそが刀である。
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