「痛ったぁ〜〜い、だわいなぁ。」
「わいなぁ。」
「あのカエル・・どうしてくれようってんだ?」
「後ろに誰もいねぇ!おい!?後ろのソドムとゴモラを何処に持ってきやがった?」
「いや、・・俺たちがあのカエルに路線を外されたんだ。いっつも邪魔しやがって!!」
「俺、もう駄目〜〜。」
「今度見つけたら生で解体してやるからね。」
ガレーラの精鋭三人も吹き飛ばされ、チョッパーが巻き添えを食って潰れている。
キュウィとモズは潰されることだけ免れたが、後頭部を強か壁に打ち付けてクラクラしている。それでもきっちり言い分の倍は文句を付けるあたりは伊達にフランキーの妹分ではないということだ。フランキー一家は三人以外は皆後ろの船に乗っていたからまとまって先に向かっていることは疑いようもない。

気を取り直して考えてみるに今車内にいたのは8人。

声を上げたのは7人。

後一人は?

全員の視線が一点に集まる……。






樽の上に座ったまま寝ている男がいた。
しっかりと鼻提灯を膨らませて。
全員の視線が集まり声が重なった。

「・・・なんでこんな時に寝てんだ〜〜〜〜〜!!!!」





「んあ?ついたか?敵か?」
大声に反応はしたものの絶対にどちらとも思ってない緊張感の無さで緑頭の男は答えた。
もはや不遜を通り越して無関心。
確かに堪忍袋の緒を斬るには充分な態度だ。一番元気だったパウリーがゾロの胸ぐらを掴んでグリグリと揺すりたおす。
「てんめぇ・・・・!!今の事態わかってんのか!?俺たちゃ線路を外れて迷子になったんだぞ!」

「何言ってやがるんだか・・・」
胸ぐらを捕まれたままゾロはパウリーに斜めに視線をくれるばかりだ。
その静けさにパウリーは覚えがある。
あれはホンの先程、橙色の髪の女性が見せた光景と同じ。あれからそんなに時間は経過していない。


半分しか目を開けないで片手で頭をぼりぼりかいてどう見ても寝ぼけた漢が面倒くさそうに尋ねた。
「うるっせぇなぁ。聞くぞ!ここは何処だ?この列車は何処にいんだ?」
「海だろうが!判ってて何を……!」
横からルルが声を掛ける。
「んで、外は強ぇ風が吹いてんだろ?」
「……お前がいくら強いからって……アクアラグナを舐めるのもいい加減にしろ!!」
タイルストンは反対から吠える。

「なら大丈夫だ。」

「はぁ?」

「海と風があれば、大丈夫なんだと。」

「はぁぁ?」


剣士のくせに大あくびをもう一つ。
「今は航海士の領分で、俺の出る幕じゃねぇ。運転手のバーさんも無事みてぇだしな。
大体こっちが要り用ならとうの昔に拳骨か口汚く罵りに来やがるからな。」

誰の事だと聞かなくても判る。
綺麗に伸びた足を隠そうともしないあの橙色の髪。
脱いでも平気なのはこの漢の側だからか。



揺れるというのはもっと静かな状態だと思うほどの嵐の中の海列車。
車内で男はまた両手を組みもう一度高鼾と決め込んでいる。
先程の衝撃も先の不安もなんのその。
航路には全幅の信頼を置いて戦いの前に彼の眠りはより一層増す。



彼女の導く先は、決して迷わない。