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言挙げ


「おーいロロノアよぅ。」
モリアの居城の中までの急な階段を上る皆の足に勢いが付いている。
チョッパーは獣の形だしサンジなど鼻息の荒さがよく目立つ。
「なんだ?」
後ろから息も切らさず声をかけてきたフランキーに速度をおとすことなくゾロは答える。
「いーのかい?」
「何がだ?」
「俺としちゃぁよぉ、おめぇが一番慌てるんじゃねぇかと思ってたんだぜ?」
「何のことだ?」
正面を向いたままゾロは上を目指す。
「あのお嬢ちゃんよ。おめぇのだろ?  なのに他の奴らに憤慨させといて良いのか?」
ゾロは足を少し緩めた。何も答えずちらりと自分の斜め後ろを見る。フランキーが少し不思議そうに、そして少し含みを持った笑顔で脇に上がってきた。

おめぇのだろ?

そう言う微笑みだ。

「・・・・いつ判った?」
「サニーに乗ってすぐだ。おめぇら黙ってりゃ判らねぇと思ってたのか?」
「いや。隠したつもりもねぇ。」
堂々と言ってのけるゾロにフランキーは一度天を仰いだ。
「だろうな。あれじゃぁな。  で?」
「でってのは?」

フランキーは自慢の自前の歯を見せてにんやり笑った。
「俺はよ、まだおめぇの口からお嬢ちゃん助けに行くって聞いてねぇように思うが。」
おうどうなんよ?と言いたげなフランキーにゾロは肩を落とした。
「・・・阿呆くせぇ。言えばナミが助かんのか?」
「いやーーだがよぉ・・」
「それより俺の影を取り戻すのが先だ。あの敵相手に本調子じゃねぇってのは言い訳にならねぇ」
フランキーは肩をすくめた。少し気落ちしたと見せたいらしい。だがゾロは全く相手にしなかった。声色に乱れはない。冷静に、全くいつもの通りのゾロの声だ。

「おいおい待て待て。良い方法だと思うぜ?それがベストだとな。けど、それ聞いたら嬢ちゃん泣かねぇか?」
「ばーーか。あいつはそんな簡単にやられるタマじゃねぇよ。逃げるって事にかけちゃウソップより上だ。それに・・」
「?」
「中途半端にあいつを助けに行けるか。どんな罵倒されるか判ったもんじゃねぇ。誰が助けたって助かりゃいいんだ。影四体にナミ一人。俺たちぁどれ一つ取りこぼす気なんて無いぜ。」
そう言い捨てて速度を上げる。後ろから見ているからこそ判ったが、ロロノアの耳だけがうっすら赤い。
嘘を言う男ではないようだ。だとすると船長と同じ、自分の女よりも全部助けるって奴なのだろう。




島に漂う臭うようなねっとりした空気が彼らの周りで少し動き出す。二人の勢いが少し弛んだ。

「あーあー意地っ張りな男と頭のいい女の組み合わせってのはどうしてこうも頑なかねぇ?」
「フランキー。それはお前に言われたかねぇぜ。」
今度はゾロが足を止め溜息をつき、含みを持った笑顔をフランキーに向けた。
「・・・・・何のことだ?」
「黙ってりゃ判らねぇと思ってたか?」
ゾロはちらりとロビンの方へ視線をながす。
「やられっぱなしみてぇじゃねぇか」
ゾロはくっくっくと白い歯を見せた。
フランキーがその頭上から睨み付ける。
二人で時が止まったかのように感じた。


「まいった」
破顔一笑でフランキーは溜息をついた振りをする。
「言ってくれるじゃないのよ若造が。」
「いい年こいたおっさんが下らんことを言わせようとするからだ。」
「ま、俺としちゃ前よりおめぇが好きになったぜ。もっとガチガチのアゴ野郎だと思ってたからな。」
「・・俺もお前は気に入ってるぜ。」
「だろ?」



城の中まで後数歩。
さぁ奪還劇の始まり。



*****

ゾロが見た!カプの方も書く予定