How long?   (12R)





「あら?」
それまで怒濤の表情を見せた海で、風が凪いでしまった。
そう言うこともあるしこれじゃコーラは勿体ないから風が出るまで休ませて貰うわ、と肩を手元の新聞で叩いて疲れ顔の航海士が宣言したので、風が出るまで船は停止。肌で気候を判るナミが休むというのなら残りが交代で見張りをすることになった。

籤を引き当てたロビンはしばし高いところから本を読みながら海と船内の観察を続ける。海は物音一つない凪で、船の中は変わらず騒がしい。気を使ったのか見張り台の主は空っぽなのはありがたいが、話し相手も居ない退屈な時間だ。
丁度本が終わりかけた頃、ウソップが交代時間だと申し出てくれたので降りた。
「風はでねぇか?」
「今のところはね。敵もでないし。私はちょっと疲れたわ。」
共に仮眠を取るのも悪くないだろうと女部屋のドアを開けると真っ最中、ではなかったが裸のゾロが横たわるナミの上に見えた。


「あら。」

私の声にぴくんとナミが反応してる。慌ててこっちを見て真っ赤に染まり、急に首を正反対に回して薄手の布を頭までかぶった。でも、薄い生地が滑らかなでいくらか綺麗なラインがそこだけはくっきり見える。

その上から覆い被さって大事なところを隠してるゾロと目があった。
一瞬、ぴくんと走った口元の引きつった筋肉は口をきく。
「おう。」

あらあら。
こちらもうっかりしてわざわざ覗いてみるのを忘れてしまった。
結構静かだったせいもあるが自分らしくないミスだ。
さてこの戸を閉めてあげるのがよいのか、どう声を掛けようかしらと考えてしまった。
これもいま一つ自分らしくない。
すぐに行動を決められないなんて。疲れてるのかしら?



その逡巡の隙にゾロが先に片手をあげた。
「悪ぃ。今やってっからあとにしてくれっか?」
「ゾロ!アンタねぇ!」

いきなり上の男に怒鳴りつけたナミは一瞬忘れたらしくはらりと布が落ちかけた。ゾロの方も布が落ちてヘソの下までギリギリ見えそうで見えない、その瞬間に彼女をすっぽり布と腕の中に仕込むとは。
やるわね。
けどなんて素敵な眺めかしら。

「まだやり足んねぇだろ?」
「よくも!あれだけしといて!」

喧嘩を含んだ睦言なんてやっぱり若いわね。ナミも疲れなんて何処に行ったのやら?

私は片足を後ろに引いた。ゆっくりと目の前のドアが閉じてゆく。
そうそうこれくらいは。
「ごゆっくりね。」
「ロビンッッッッ!」
ゾロの親指が上を向いていたのが最後の映像だった。




振り向くと髪が頬にそよいでる。
これで風が出たわなんて言ったら私、殺されるかしら?ドアを開けて始まってたらそれも面白いんだけど。
口元が緩みかけて疲れなんてどこかに行ったようだけど、私が次の決断をするのに掛かる時間は、さぁどれくらい?





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