男は鳥を飼っていた。 小さな村の入り口である港から歩いて10分くらい。店は少しわかり辛い場所にあったが飲み屋と飯屋を兼ねていて、仕事帰りの連中もいれば子供を連れた人間も気楽に過ごせる雰囲気があり、人が絶える事は無かった。また港町であるために日によっては余所から来た一見さんも常に数人見られる。暖かで素朴な普通の店だった。 誰もその男の名前も素性も知らなかった。一羽の鳥を籠に入れて持ち歩き、他に何をするでも無くふらっと村の酒場によっては黙って飲んで行く。そして誰とも話さず黙って帰る。服の端から見え隠れする腕や足から、鍛えられ、傷つき、日に焼けた過去を物語る身体が見える。他の誰とも違う空気をまとっていたが、いつしか店に馴染んだ風景となっていた。もっとも店側にも旅人も受け入れるような素地があったことは言うまでもない。 大体黙って飲むだけなのだが、店の子供が話をねだると極たまに物語を語った。いつもは寡黙なその男が語り出せばとてつもない話をぶち上げるので皆最初は馬鹿にしつつも話が進むにつれ聞き入ってしまう事がしばしだった。 聞き入って別世界に連れて行かれた大人達は話が終わって我に帰ると互いに目を合わせて苦笑した。 (またいつもの法螺だぜ・・・まぁ少しくらいなら聞いてやっても良いけどな。) 彼の話は店に来る子供達には絶対的に人気が有った。子供のねだりには少々弱いらしく大人が頼むよりも語り始める事はほんの少し多かった。 でもそれはほんの極たまにの話で、普段彼は店のカウンターの隅に座って静かにグラスを傾けながら黙って飲んでいた。 『丹生』 「良い日差し!のどが渇いたわ。」 晴天の多いこの時期には珍しく花曇りの日だった。見知らぬ女がカウンターにどさっと座った。闊達そうな声にショートパンツから伸びた足は日焼けして、健康そうだ。日除け用らしい使い込んだ帽子を大きめの革の鞄の上に脱いで横に置く。色の薄いブロンドのストレートの髪が下から現れた。 店内は丁度人の少ない昼下がりの時間頃。 カウンターの中で店主は新聞を読みながら、そろそろ一休みの頃合いを考えていた。 そういうタイミングで入ってきた客相手に商売用の笑顔を作れないマスターに物怖じもせずに声を掛けるそれは度胸があるのか素直なのか。 「もうお休みになる?時間が悪くなかったら・・冷たい物をいただける?」 そういう場の雰囲気を察知したらしい細かい気配りにマスターの機嫌は良くなり、とっておきだった柑橘類を搾った飲み物に氷を浮かべてだせば、これをまた美味しそうに喉を鳴らして一気に飲み込んだ。土地の者ではなさそうだが連れは居ない。普通の女の一人旅が堂々と・・?とはいえ度最近のグランドラインにはこういう光景がちらほら見られるようになっていた。名を馳せ、冒険談を残した海賊も最近ではめっきり色合いを変えていた。昔多少見られた特殊な能力者達は今ではほとんどお目にかかれない。夢を追う物達はその姿を変えていた。 一冊の本がグランドラインの敷居を下げたのだ。 弱くとも、心強き者達が海に増え、愚か者は海に散っていった。昔のように夢を追う男達は少なくなったと言われている。 さすがに女性一人というのは未だに珍しいものではあったのだが。 使い込まれ膨れた鞄には本と書類ばかり。ストローを咥えながらそれらを雑に引き出す、そして奥から最近軽量化された小型のカメラが転がり出てきた。出てきた書類には写真やスケッチにびっしりと書き込まれた文章が見える。 「学者さんなのかい?」 話し好きのマスターは常連にも一見にも同じように口をきく。それがこの店の人気の一つであることを知らないのはマスターくらいのものだ。 「学者だなんて・・好きで珍しい鳥を捜してる変わり者です。」 背中の中程まで伸びたまっすぐの髪を一つに束ねて広い理知的な額をはっきりと見せている。 「実はこの島に珍しい鳥が居ると聞いたんです。島のあらかたは探したと思うんだけど・・。何かご存じ有りません?」 言葉使いの綺麗さから育ちの良さが伺える。その割に足を組んで居る行儀の悪さのアンバランスが面白い。 「鳥ねぇ・・?さぁ・・あのオヤジにでも聞いてみな?」 マスターは首を捻りながら窓際にいる男を指さした。男はいつもの席で指名されていても全く反応を示さず、一瞥もくれない。鳥籠を目の前に置き、語るでなく鳥を見ているようにすら見えなかった。男の目は・・ただ内なる者にとらわれているように暗い光を放っていた。 「あいつもいつも連れてるぜ。」 縮れた白髪頭のその容貌にそして特徴のある横顔。 一緒にそちらを見た彼女の目が大きく見開いた。 店主はそれに気づかず遠慮無く男に声をかける。 「おい、おっさん!」 声を掛けると彼は黙ってこちらを向いた。表情のない伽藍のような目をこちらに向けてもなんの反応もない。そのまま立ち上がり、ふいっと手に持った鳥籠とともに席を外し、真っ直ぐに外に向かって出て行った。籠の中にはくすんだ羽の色をした鳥が一羽、元気なさげに下を向いている。その羽模様と頭の形にようやく目の行った彼女は叫んだ。 「え・・あれ・・?まさか・・ニュウ??そんな!」 男はするすると食堂を出てしまった。 「おい、おっさん・・聞いちゃいねぇな。行っちまったよ・・。」 一瞬固まったまま動けなくなった彼女はようやくマスターのその声に弾かれたようにお金を置くと釣りも取らずに書類をざくっと鞄に突っ込んで追いかけた。 「ありがとう!」 それでも挨拶を忘れない。その律儀さにマスターは微笑み、そしていつもの彼の安楽椅子に腰掛け一時の安眠を得ることに決めていた。 道を行く男の足は案外速かった。力無くただ歩いている風なのにもう視界から逃しそうになる。 店を出たなりに目の端に町はずれの曲がり角で影がちらりと映った。彼女も慌てて帽子を飛ばさないように押さえてそちらに向けて駆けていく。 「まって!」 「その・・鳥をみせて! ウソップさん!」 こちらが必死に走っても止められないその足の速さ。 白くなっても縮れているその髪と特徴のある鼻。 確信から必死に声を掛けると切れ切れに届いたのか男の足並みがゆるんだ。 びくっと動きを止め、顔をこちらに向ける。 間違いない、この顔だ。 少し緩んだ足に追い風を得て更に言葉を継いでいく。 「・・それニュウでしょ!?ウソップさん。今じゃ幻って言われる・・・。」 その隙に男は走り去った。 その目に一瞬光を宿していた・・と確信できる視線をくれたのに。 研究者の素質の一つには己の研究へのどん欲なままの追求欲がある。が、貴女ほどそれに長けた者は居ない。学生時代にそういわれ続けた。 欲のまま先程の店に戻りそして寝ていた親父さんを起こした。安眠を妨害されたと怒鳴られても彼女は物ともしなかっただろうが・・案外諦めたような顔して彼の家を教えてくれた。 |
「入れよ。」 海沿いの崖の上。小屋と呼んでもおかしくない村はずれの入り江の側。その入り江も高くてとても船が入れる地形ではない。 「この下に落ちたら助からねぇ。」 小屋に入らず体を乗り出して崖下見ている彼女の姿に思わず声を掛けてしまったのだろう。細やかな気配りをするのは聞いていた通りの彼だ。 「鳥のことを聞きたいって?珍しい奴だ。見たら帰れ、文献なら残ってるだろう?」 彼はじっと私の顔を見続け、そしてがっかりしたように視線をそらした。 「珍しいのはその鳥の方じゃないですか!昔はその特徴からよく使われたと聞いていますが・・。」 がっかりした顔で下の方を見ていた彼は不思議そうな顔をして目を閉じた。 何を思っているのか途中から目を瞑ってその声を楽しんでいるかのように薄ら笑いを口元に浮かべていた。彼女が何も言わなかったのは、その男がなぜだかある意味真剣で、優しい顔だったからだ。 「この鳥は番の鳥だ。何が有っても片割れを捜す旅を止めない。 こいつの凄い所は相手を捜すためなら何処へでも最短距離で飛んで行く事だ。電々虫が登場する前にはその種性を使って良く船同士の連絡に使われたらしい。相手何処に居ても一匹を抑えておけば互いに会える。 ただこいつのその習性のコントロールには“丹生”がつかわれる。丹生を与えてある間,こいつらの羽の色はくすみ,番を捜す気力も奪われる。番を離して一日二回の丹生の投与を怠らなければおとなしいもんだ。丹生を切らして一日経つと目が醒めたように一気に番の方に向かって飛んで行く。番の生死を問わずな。 番になれば一生一羽にしか反応しねぇ。そういう辺りが知ってる奴に似てて捕まえたんだが・・。今じゃ此奴だけが俺の相棒だ。」 「この子の番は・・?」 「此奴の番はあそこにいる・・。待ってるはずだ。あいつ等と一緒にな。」 「あいつら」 己の言葉に男の雰囲気は柔らかさを見せた。愛おしそうに鳥を見る目は鳥だけでなく仲間を見るものなのだろう。 「仲間はどうしたの?・・・・ウソップさん。」 久しく呼ばれなかったその名に全身を打たれたように彼の体は揺れていた。 「なぜその名前を?」 「貴方の本を読んでいました。」 「それは俺が書いたんじゃねぇ。航海士が書いて・・俺はただそれを手伝っただけだ。」 (とりあえず地図は書くけどその前に航海術を書いておきたいの!あたしが書けば中身充実たちまちベストセラーになるわよ!印税もがっぽり儲ける でもね。できたら専門家相手の本よりも皆が読めるようにしたいの。誰でも読んで航海が出来るように・・。それにはアンタの法螺話が丁度良いのよ。) (何?そのタイトル・・本の顔なのよ!センスってモンがあるでしょ!ねぇルフィ?どれが良いと思う?うわーーやめて!そりゃこの賭に勝ったのはアンタだけど・・。まぁいっか。じゃ、決まりね。「海賊王の作り方」・・本当にこれでも大丈夫かしら?) (作者名は出すとやばいわよね。え?海の勇者?やめてよ。それくらいは作者不詳にさせて貰うわよ。) あの時・・皆がいていつものように笑っていた。 いつもの大騒ぎでまた今度は創作が行われた。 そして彼女の書いた航海術は予想通り今の世間を席巻していた。 「真ん中の航海術は違うかもしれないけど、でも、始まりと最後の創作か童話って言われる部分・・このお話は絶対貴方が書いたんだって母は確信してたわ。」 「母?」 「自分への手紙だって言ってた。」 「手紙・・。」 そうかもしれない。 俺が書いたのは・・手紙として故郷のあいつに語りたかった物語だ。 俺の見た世界。俺の見たかった世界。 返事をしないウソップに彼女は自分の帽子を両手にぎゅっと握りしめた。 「私はイーストブルーから来たの。母にはあまり似なかったから判りにくいかもしれないけど・・。」 束ねた髪を解き真っ直ぐ立ちあがった。 日に焼けて、線の細い容貌の中に見つけた懐かしいもの・・。 「そういえば・・・お前似てるよ。うん・・・。キャプテンクロと戦う決心をした時の・・・あん時のカヤに目がそっくりなんだ。」 溜息を伴って紡ぎ出された言葉。 その名前。 時空を超えて彼を引き戻す言葉。 いつも心の奥に彼とともにあったその名前。 彼の口からこぼれた名前に彼女はこぼれるようなため息を吐き全身をふるわせた。 口だけが微妙に動く。ただ・・どう言葉を紡いで良いのか判らない様だった。 感情は言葉にならず・・。ただ譫言のように「それが聞きたかった・・」と繰り返していた。 ようやく形になった思いは『彼の方も同じ思いを共有していたのだろか?』聞かされてきた記憶とつながっていく。 縮れた白髪は昔は漆黒だったと聞いていた。コシのあるつやつやした髪が羨ましかったと何度も聞いた。 顔に付けられた多少の傷もその時間の差を物語る。 冒険に出た彼の冒険談が新しい冒険者を作りだすくらいに遠い時間が過ぎていた。 彼女は大きく息を吸い込んだ。更に自分に勇気を与えるために。 「キャプテンクロって・・・うちを襲ったって言う海賊ね。若かった海賊王にあの幻の船を渡した時だって聞いてる。本当だったのね。でも・・その後なんで一度も来なかったの?」 「・・・・一度だけ・・。一度だけ帰った事が有る。そん時だおまえの兄さんか姉さんに遭ったのは。 けど・・・・・。そのまま逃げ帰っちまったよ。 なんつったら良いんだろうな・・・子供のお前にはまだわからんと思うが・・・・。」 「当ったり前じゃない。」 その強気なもの言いは気の強い航海士を思い出して彼女が眩く見えたのか、彼は目を細め微かに笑った。 「『帰ったら冒険の話を聞かせてやる』って気の利いた台詞だとでも思ってたの? 女を引きとめるには弱すぎ。母さんはとっとと学生結婚したわ。私なんて五番目よ。」 「別にそんな事が辛かったんじゃねぇよ。 会いたいとは思ってたが、俺たちの間は・・恋愛・・とかそういうのとは違う・・。 俺はいつでも、誰と所帯を持ってもカヤが好きだったよ。 心の支えで、何時か会えると思ってた。 そして今でもそうだ。 あの約束は・・ 2度と会えなくても、会わなくてもそれでも変わらなかったと思うぜ。きっとカヤも判ってくれるさ。」 「よくわからない。好き勝手やった男の屁理屈に聞こえるわ。その一言の約束が互いを縛るとは思わなかったの?」 「カヤは縛られてたか?俺達は同じ苗床からそれぞれの夢を見ていた。だからその夢は違う方向に花開いた。良い・・医者になったんだろう?」 力一杯彼女は頷いた。 「それでも始終あの人は夢を見ていた。いつか約束を果たしに来る幼馴染を待ってた。 そこでこの本に遭ったの。見つけた時は物凄かったわ。『ウソップさんが帰ってきたのよ!』って。真赤な子供みたいな顔で本を抱えて駆けて来て、走りまわって飛びあがって1ページ毎に興奮していた。 私なんてまだまだ三つの子供だったのにそれが最初の記憶なの。馬鹿みたいよね。最初の記憶と一緒にあるものがそんな母の姿なんて。その本を二人で毎日読んでたわ。もう空で全部言えるくらいよ。お陰で一家中で私一人が道を外れたわ。嫁に行けと言う父を振りきって出てきてしまった。 私は母さんの夢から産まれてこの本を苗床に育った娘よ。どうしても普通の生活が肌に合わなかった。海を見ては遠くに行きたかった。 たまたまその他にも好きだった鳥の研究で今はご飯を食べてるし、そのお陰で家に篭らなくてもいい。 母さんは一番の理解者だったけど父さんとは今だに喧嘩して飛び出したまんま家に帰ってないわ。 もうたぶん帰られない。怒らせちゃったもの。 そうそう。。。父さんは"クラハドールさんに似ている"ってメリーが最後に言ってたけど ・・・・・判る?」 老執事はあのままあの家を守りあのまま年を重ねて死んだのだ。穏和そうな微笑みが今も見えるような気がした。そして彼の造った船は世界中を駆けめぐった。 「・・・・・・・・・・そうか。あの人と似た人と結婚したんだ。 それは・・幸せだったろう?」 「もちろん。」 彼女の表情はくるくる変わる。 すると益々母親に似ている気がする。彼女はメリーに怒られてどう謝るかも相談された。そのくせ、自分の家内の事には一際な自信を持っていた。家の使用人達を家族代わりにこよなく大切にしていた。立場上明かしちゃいけないから辛いの・・とも言っていた。 「そんな良い親父さんを困らせるもんじゃない。説得するか、幸せになれ。それが唯一の親に返せる方法だ。」 「説教なんか聞きたくないわ。」 十代の反応はこんな物か?そういえばそうだ。俺もそうだった。親に憧れながらも己は違う道を行くつもりだった。 だからこそ言わねばならない。大人の心は教えない限り経験するまで理解できなかった。もっとも言われて判ったのはその半分にも満たなかったが。 |
ふと籠の中の鳥が気怠げに首をもたげた。 か細い声で鳴きその声に二人ははっとかなりの時が過ぎた事に気が付いた。日ももう落ちかけている。 「もう、行きます。私、貴方に会えて良かった。」 「ありがとう。おまえが持ってきた物で俺の扉が開いたようだ。俺も又夢に向かって旅立てる。」 ウソップは立ち上がりそして彼女を見た。 そのまま軽くほほえんだかと思うとかすかに足を引きずって壁の棚に向かう。その中から茶褐色のガラス瓶を取り出した。銀色に光る液体は重たげに瓶の中で揺れ、彼の手の中から海辺の窓に向かって静かにこぼれていった。夕日を受けて光りながら大地に浸みゆく彼の鳥の楔。“丹生” 彼は今鳥との契約を反故にするのだ。 「あたしは来ただけよ。何一持たないで。」 「お前は夢を運んでくれた。それが何よりだ。 そして俺はお前の旅立ちをカヤの代わりに見送ってやる。 行ってこい。そして全てを見て回れ。 これが俺様からの餞の言葉だ。心して受け取れよ。」 「貴方はどうするの?」 彼は鳥籠の入り口を開けた。中の鈍色の鳥はまだ夢の中にいるように動かない。 「こいつと一緒に船に戻る。そして当然海を回る。そうしていればいつかまた彼奴等に出会えるさ。俺の心臓はもうくたばりかけてるし奴らの航海も終わっちゃ居ない。そうして出会ったらまた俺達は次の冒険に向かう。あいつ等が行ってんなら行き先は地獄しかない。どうせそこで待ってるよ。一人行ったらもう皆行かずには居られないさ。そんなところなら俺様が行ってやらないと何も出来ない彼奴等が困るからな。」 親指をぐっと力強く上に向ける。その指で軽く鼻の下をこする仕草は若者のように見えた。 「・・行くのね?彼らが呼んでくれるまでこっちの海で良いの?」 「ああ。“帰ったら信じられないような話を聞かせてやるよ”」 迷わぬ視点。遠くを見つめる優しい目。 母さんを決意させた瞳を自分も見られるとは思わなかった。 「・・・・母さんが貴方の嘘を待った気持ちが、ようやくわかったわ。」 そしてもう会えないだろう事も。 彼がいつ仲間に巡り会えるのかを決めるのはもはや海だけだ。 私もきっと待つだろう。 私は私の冒険をしながら。 そしていつか私の仲間を見つけるだろう。 受け継がれて行く意志。この海賊の子等は世界中に息づいている。 翌々日、大勢の人が静かにその家を出入りした。 白い服の一団は葬儀を執り行う者の正装だと聞かなくても彼女には判った。 彼は旅出ったのだ。彼の意志が決まり、未来を見た後に仲間が連れに来て共に行ってしまったのだ。 手伝いの出入りが退いて、その家に残っていたのは空の鳥かごとベットだけ。 その空虚な部屋に向かって言った。 「行ってきます。」 鳥は魂を運ぶという。 彼は新たなる航海に旅立ったのだ。 静かな羽音がした。 丹生の呪縛から解き放たれた鳥はその容色を変え一心不乱に目的を目指した。 華やかな色を失わない自らの番の眠る場所へ。 同じ島の人の目から隠れた入り江の洞窟の奥、羊頭の船とともに眠る姿があった。その傍らに羽を休め・・。そこに最後の海賊王の仲間の手によって施された微妙な仕掛けはゆっくりと洞窟の鳥のために用意されていた小さな入り口を閉じた。 誰もその船の行方は知らない。 The END |
ごめんなさい。嘘カヤは「心理的にはありでも現実成り立たないだろうなぁ」派のかるらです。アニメとは意見があってない(苦笑)でもカヤクロはこれは心理的にはありありだろうと思ってますが。 |