「ルフィは無意識なのかしら?けど、あんたが解ってルフィが解ってないはずないじゃない」



その通りだ。
一通りの不可解な笑いとも泣きとも付かぬ行動が終わったかと思うとナミはいつものナミに戻っていた。
口やかましくて、勘が良くて、気になると突っ込んで引き倒さないと気が済まない、一見冷たい口調と面倒見の良いいつものやかましい魔女に。
「あいつが気づかない訳ねぇ。」
「じゃぁなんで?」
眉間にしわを寄せ、ふくれた頬のまま空をにらみ・・時折こっちにえぐるような視線をよこすがこっちもいちいち反応してやれるか。
そうでなくてもさっき行き場を失った自分の手のやり場に未だに困っているというのに。






・・あいつは戦う真摯な相手の真の願いを解ってしまうんだろう。
町を助けたいとか。
人を助けたいとか。
自分を襲わないで、眠ってしまって欲しいとか。
おそらくは俺には読み切れない隠されたお前の何かまで。

そしていつしか同調する。




けど俺は凡人で。
お前の願いを感じても同調できない。

見るな と言う呪は 視ろ と言う呪と同じだ。
繰り返されればつい、盗み見てしまう。見続けて誑かされて目が離せなくなっちまう。
逃れられなくなる。
もう。





「・・・・・・・もう少し見てみたいな・・・・。」
あいつの呟きが半分しか聞き取れなかった。睡魔が俺の側に来ている。
アイツは今夜はようやく寝られるのか、それともまた違う種類の呪を掛けるのか。


ようやく寝息が聞こえてきた。
風の葉擦れも柔らかい。
煙は細く空へ向かった。
その先に名も知らない天井の星がこいつの眠りを嬉しそうに見守っている、そんな気がした。



戻る