チョパ日記18
この船に乗って沢山の嬉しい言葉をもらった。
今度は俺が返してあげる番。

「良いかチョッパー、俺様がこの船の先輩だ。俺様の言うことをよーーく聞けよ!そうしたら俺様がこの船でのお前のありとあらゆるトラブルから守ってやるからな。」
「うん!」




【先輩】





ゴリゴリゴリゴリとチョッパー愛用の乳鉢は音を立てている。数日安定した気候だったので薬草の乾燥がうまくいったらしく鼻歌が聞こえる。鼻歌は聞こえるがこれで居て結構な重労働だ。
以前おもしろがったルフィやノリで計量したウソップをこっぴどく怒ったことがあったんで最近の彼らは近寄ってこない。日陰の甲板とはいえチョッパーの額に汗が噴き出てきた。
「お手伝いしましょうか?船医さん」
「え!?ああ・・しなくてもいいぞ、臭いも付くし結構硬いから力がいる。俺一人で大丈夫だ。」
「臭いくらい構いやしないわ。お手伝いしたいんだけど させてくださらない?」

ロビンの瞳は漆黒に深い。紫を含んだ黒に引き込まれそうになってチョッパーは答えに困った。
乳鉢を擦る手にそっとロビンの白い手が添えられる。その真っ白な手にドキドキする。
「エッエッエッエッエッエッエッエッエッエッエッエッ」
鼻の頭から頬までを染めて白い歯をにやにやさせていると後ろからフランキーの影が重なった。
「いよーぉ仲良いじゃねぇのお二人さん」
フランキーは言うだけ言ってすたすたと歩き去る。
「・・・。」
「フランキー?どしたんだ?」
「妬き餅妬いたんじゃない?」
「何でだ??」






「フランキーも風呂に入れるんだなーー。」
「ったりめーだろうが。オレの後ろ半分は生身だぞ」
「ってことはさ、器械と生の身体の接続はどうなってるんだ?」
「秘密だ。男が自分の秘密をべらべらしゃべるもんじゃねぇ。」
「そ、そっか・・残念だけどそれもかっこいいな!」
ひどく残念そうな青鼻が微笑んだので思わずスーパーな男としても頬が赤くなる。
こんなナリの奴があのエニエスロビーのシカゴリラだったかと思うとどうしても一致しない。あのねーちゃんに頼まれているからあの時のことは二度と口にする気はないのだがこのトナカイの変形は今の形の自分よりもよほど不思議だと思うのだが。

「おめぇはよ、医者だろ?機械より生身が気になんじゃねぇか?」
「そりゃそうだけど腕だって足だって蛸じゃないんだ、一度斬られたらもう生えてこないじゃないか。斬れてすぐならつなぐことは考えてるけど斬れちゃった手足の代理を考えるのだって医者の仕事さ!」
ふかふかなこれでいて色々考えているらしい。ふかふかのシカゴリラのくせに。

よしっ!

「俺のことはアニキって呼ぶんなら教えてやっても良いんだぜ」
この船の連中をこっちは弟分と認めちゃいるが、やつらはどうも照れが先に立つらしい。ロロノアも誘っても乗ってこないのが実はフランキーには少し寂しい。
ところが帰ってきたのはぱぁっと花開いた笑顔と嬉しそうな声だった。
「そっか!じゃぁ俺はたまに『アニキ』!って初めて呼ぶぞ。けどなんだか照れくさいなぁ」
チョッパーが嬉しそうに頬を染めて見上げるその瞳。真っ直ぐできらきらしたその瞳。
あまりに真っ直ぐすぎてこっちが照れてしまう。
「おうトナカイ!」
「アニキ!」
がしっと抱きあったその瞬間一筋の、冷たい風が吹いた。
「あらあらお二人さんは、仲良しで良いわね」

いつもになく冷たい声で言っただけでロビンはすたすたと遠ざかる。
「・・・・・」
「ロビン?どうしたんだ?」
「あの女、妬いたかもな」
「どうしてだ?!!」


チョッパーは必死に考えた。
この間のフランキーといい今のロビンといいどうして??

「あ!?」

判ったぞ!!!!
この名医の診断に間違いはないっ!!

チョッパーは飛び出して大きくなって走り込んだ。大きな手でロビンを捕まえる。
「ロビン!待ってくれよ!」
「きゃっ」

ちゃんと捕まえてそのまま手を取ってフランキーの所に連れてくる。
おもむろに二人並んで座ってもらって自分はいつもの大きさに戻った。
ごほんと咳払いして二人の前にそそり立つ。、元来大きい二人なので座ってもらって丁度チョッパーの身長くらいになる。
座った二人はチョッパーを見つめて互いのことはちらりと視線を送るだけ。
「チョッパー?」
「おいおい・・」
チョッパーは思い切り息を吸った。両腕を真横に大きく拡げて二人の頭と首を巻き込んだ。


「いいか。この船では俺が先輩だからな。先輩の言うことはちゃんと聞くんだぞ!聞いてお前達仲良くしなきゃダメだぞ!ヤキモチなんて妬かなくたって俺は二人ともが大好きだからな!」

そのままチョッパーは力一杯ぎゅっと二人の頭を抱え込んだ。
チョッパーの右にロビン。左にフランキー。間にピンクの帽子のふかふかした獣が頬を押しつけている。
ぎゅうぎゅう締め上げる。


「取り合いなんてしちゃダメだぞ!本当に!オレは!二人とも同じくらい大好きだからな!」
「チョッ・・・・」
「おい・・・・・」
二人が首を動かしてチョッパーを見ようとすると逃げられないようにもっとチョッパーは小さな手をぎゅっと巻き付ける。
大きな息を吸っては吐いてチョッパーのふわふわの体毛がそよいでる。
二人の動きはゆるゆると。チョッパーの後頭部から頭頂部へ。

その先でゆっくりと、頭越しにロビンとフランキーの視線が合った。

最初は吃驚して少し緊張がとれない。

ロビンの肩の力が抜け、フランキーは反対の手で鋼鉄製の鼻をぽりぽりかいた。

二人の瞳が柔らかく互いを見て、少し染まった頬と柔らかい微笑みが広がる。



ぽんぽんぽん。
フランキーの大きな手がチョッパーの腰の辺りを軽く叩いた。

くすくすくす。
ロビンの細い指が溢れた笑い声と共にチョッパーの背中をさすった。


「ふぁっはっはっは!わかったぜ」
「うふふふふふふふはいわかりました先輩」



2人の声が両耳で良く聞こえる。
やった!俺って立派な先輩だ!!!!!








その後甲板で

「ねぇ」
「なんだ?」
「先輩の命令ですって」
「だから?」
「逆らうわけにいかないじゃない。」
「だからおめーよぉ。人を押さえつけてから言うなっての!」
「だって部屋には先客がいるんですもの」

どうやら二人はもっと仲良くなったらしい。



その頃船室で
「おいナミ、起きろ」
「何よ〜〜もうだめ〜〜3回もやっといてまだ足りないの〜〜?」
「外でフランキーがロビンに襲われてたぞ」
「ええ!?」
今まで身動きのとれなかったナミは身体を覆う薄いシーツごと跳ね上がった。
「何処で?」
「・・・なんだ起きれるじゃねぇか。ならもう1回くらいいけるか?」
「やめてよーーそんな面白い物見に行かなくてどうするのよーー!」
「今後何度でもみれるだろ」
「そっちこそ今後いくらでもできるじゃないの!」
「そうか。いくらやっても良いんだな。じゃ。」
「ゾロの馬鹿ーーー!!」

どうやら二人は元から仲良しらしい。












<一言>チョパ日記は本館の暴走系チョッパーの船内観察記録です
夏のチョパは暑苦しそうですが。