チョッパーの日記より抜粋 俺の誓い。 「患者はきちんと治す。」 今日は実行できた。凄いゾ俺。 サンジの今日の誓い。 「酒飲みに酒がらみの料理は作らせない。たとえ俺が無意識でも。」 何で泣いてたんだろう? チョパ日記14[卵酒] 「サンジ〜〜腹減ったぞ〜〜!」 コックの朝は早い。巨大な胃袋を抱えていればなおのこと。ただでさえ喧しい胃袋を鎮めるには朝の作業は欠かせない。 だがその朝サンジは起きなかった。 「もの凄い熱が出てる!!何度呼んでも応答がないんだ!これはかなりやばい状態かも知れないぞ!」 同室の船医が診てすぐに船底には厳戒令がしかれていた。 病人を一番船底でまともなソファの上にのせ、その周囲をのしのし歩くチョッパーの眉間にはしわが寄っていた。 前には正座させられたゾロとウソップとルフィが身体を揺するたびにチョッパーのにらみを受けて居心地は悪いのに何となく身動きが取れない。 「誰のせいでサンジがこんな高熱を出したと思ってるんだ?」 体型も大型になり、眼自体も大型化している。 「それは・・・・」 口を挟もうとしたウソップはチョッパーの怒りの一目で黙ることになった。 「そりゃあ昨日の宴会で勝手につぶれたサンジが悪いかも知れない!けど!」 「俺がつぶれるまで宴会中はあいつ楽しそうだったじゃねぇか。」 ルフィの突っ込みには雷が落ちた。 「だからって急に夏から冬に気候の変わった甲板に薄着で放置すること無いじゃないか!!」 病人を後ろにかばった形のチョッパーの叱責に正座組は皆一様に視線をそらしながら首を捻っていた。 (俺は先に記憶がなくなってるし) (俺はナミに追い出されたようなもんだし) (俺のいない間にあいつが変になってたんだし) (((サンジの熱って本当に俺たちのせいなのか))) 正座させられているゾロも黙って昨夜の記憶をたどってみる。 昨夜の宴会は暑い気候の中いつものごとくのノリで始まった。途中で酔ったチョッパーとルフィが早々につぶれた後、ゾロ以外の残るメンバーで宴会中に持ち出されたカードゲームが盛り上がっていた。金がかかった途端もの凄い冴えを見せたナミを相手にウソップは早めにリタイアし、席を外したがサンジはナミの甘い餌に釣られて、たかられ続けながらも異様な熱気でゲームを続けていたはずだ。 寝てしまったチョッパーを船底まで放り込んであがってきたら既に狂乱したように踊り狂う喧しいサンジをみたと思う。確かにあの興奮は異様だと思ったが、説明を求めようにもナミはゾロと入れ替わるように船底に降りていったし残るルフィの片づけ途中で腕が伸びるばかりだから面倒になってしまい甲板に腰を落ち着けた。残っていた酒を勢いよく空けたかと思うと浮かれて足が地に着かないサンジの行動は気味が悪いので放置しておいた。 そうしたら今朝のこのざまだ。 「異様な元気さって言うか・・・風邪なんか引きそうになかったぜ?」 記憶をもう一度攫ってゾロは続けてみる。とウソップが 「あいつも俺と同じで熱出したことなんて無いって言ってたし・・・なぁ。」 「そんな言い方しなくても!熱を出したことがないなんて化け物みたいじゃないか!!」 今更ながらに皆絶句する。珍しい型の患者を目の前にしてチョッパーは興奮してしまったのか? この船で熱を出したことがあるのはナミだけなのだ。 これ以上は興奮したチョッパーに言っても仕方あるまい。 「まぁ、でもお前がいるんだし、患者なら全部名医のお前に任せて良いだろ?飯は各自好きに取るって事で。」 料理人がいない非常時のせいかゾロの脳みそが妙に動いている。チョッパーの鼻はホンの一言にぴくぴく興奮した。 「そりゃ!俺が看病するさ!猶してみせる!けど!!でも今のサンジには薬が使えないんだよ!」 「あんだぁ?」 「とにかく変な病態なんだ。薬があっても意識が確認できない状態だからこんな時は出鱈目に薬を使えばいいとも思えない。となると外から冷やしてやるしかないんだ。 だからウソップ!氷を持ってきて氷の袋を作ってくれ。」 「おう。」 「ルフィは・・」 平穏な日常で彼に与える仕事は困る。必ず余計なことにしかならない。チョッパーの困惑した視線を無視してサンジの赤く妙ににやにやした顔をぺしぺしたたいてルフィは言った。 「なぁなぁ、熱のある時って卵酒が良いって昔聞いたぞ。」 「ああ!俺様も聞いたことある。ナミの時には卵がなかったから作ってやれなかったけどな。」 「でも作り方は?」 「・・・・・・。」 全員が顔を合わせた。合一した視線はトナカイに向かう。 「ドクトリーヌは果実酒の効果は教えてくれたけどそれは俺、聞いたこと無い。」 困ったような殊勝な顔をしてチョッパーが皆の尋ねる視線にしどろもどろで答えた。 「ってことは酒だからゾロの管轄だな!」 「そうだな!」 「何で俺なんだ?」 「良いじゃん!船長命令だ!暖かくて卵の入った酒だぞ!俺も手伝ってやるよ。」 にかっと笑うルフィの顔に嘆息してゾロは腰を上げた。 「あーーーーーお前やめとけ。」 「んん?どうしてだ?」 「お前がこいつのいない台所で作業してるって聞いたらこいつの心臓が止まる。」 確かに。それでは薬どころか毒になる。 案外気のいい男は不満の声を後に渋々ながらもマストの階段を上り始めた。 「どうなってもしらねぇぞ、俺だってガキの頃にちらりと見たっきりだ。」 ぼそぼそ呟いていたのは心からの忠告だった。 たとえ、看病に燃え上がるトナカイの耳には全く届いていなかったとしても。 「さてっと。とにかく暖めて卵を入れりゃ出来るだろ?」 右手に鍋。左手に一升瓶の料理酒。 卵は先の港で買い入れた新鮮なのが冷蔵庫の中に5ダースばかりある。 酒は他にもあるわけだから、この薬が出来たら俺はそっちを貰おう。料理酒ってのはコックの酒なんだから奴にはこれで良いだろう。俺にはあっちの方が良い。にやにやした酒飲みではなく臨時料理人は料理酒の栓を開けた。 鍋を強火に掛ける。酒を注ぎ込むとじゅわっと音が立ちみるみる熱くなる、湯気の確認をして横から卵を割り入れた。 「これ、かき混ぜるんだろうなぁ?」 手近な菜箸を数本掴んでぐりぐりかき混ぜると卵はほぐれていく。 だが酒のむせる臭いと共に突沸した中の卵はかき玉様に固まってしまった。 あれ?仕上がった姿はこうではなかったはず。 鍋を下ろして中身を棚のボウルに開けてしばしゾロは首を捻った。 材料が足りなかったか? 卵が多かったとか? いや酒が足りないのか? 「なぁに?この臭い」 ドアを開けたナミはキッチンの異臭に眉を顰めた。 「お酒臭〜〜い。それに生臭〜い。」 「お前の好きな臭いだろ?ああ、良いところに来た、手伝ってくれよ。」 「なにを?・・・・ってこれ失敗した卵?お酒?」 と言いながらもゾロの前のボウルと材料を見てナミは叫んだ。 「卵酒のなり損ないだ。酒飲みのお前なら作るのも楽勝だろ?ほれ。」 「あたしも良くは知らないわよ?けどあんた鍋に卵入れて火にかけたでしょ。その鍋サンジ君が大事にしてる奴じゃない。それを火にかけて作っていいの?」 「違うのか?」 「卵って熱を加えるとすぐ固まるから・・・きっと間違いだと思う。でもこれどんな味になってるの??」 ナミがボウルから味見と称してスプーンを攫った。 「酒っぽくはないわよね。卵とじの塩甘いのみたい。」 「どれ?」 舌に卵のぷつぷつがしっかり残る。 「少し酒っぽいだけで・・酒入りの卵焼きみたいだな。」 「ああ!それそれ!案外酒のつまみに良かったりしてv」 「後でこれを肴にしようぜ。」 「そうねじゃぁ、これをやっつけて♪」 目の前に酒瓶。酒飲み二人そろえば怖いものはない。 キッチンに二人が並んで侃々諤々検討中である。 「ねぇ、使うのは料理酒で良いの?」 「これがあいつの酒だろ?」 「違うわよ、お酒にお塩を入れてあるのが料理酒。世界政府が酒に関税をかけるからその対策として広まった風習よ。塩が入って飲めないからこれはお酒じゃないですよ〜〜って逃げたのよ。ほら、こっちがお酒。これは料理酒。飲み比べてみなさいよ。」 飲み比べ用にはかなり大きいはずの普通のグラスにナミはめいっぱいそれぞれを注ぎゾロはそれを軽く空にした。 「なるほど。塩っぺぇと飲めねぇな。」 「でしょ?」 ぺろりと口に流し込む男の台詞としては落第である。ナミはゾロがさっき目を付けた普通のお酒を注いだグラスを自分用に取り分けた。 「だから作るんなら普通のお酒を使わないとね。」 「ってことはこれか。後で俺が貰う予定で少しだけ味見しただけのはずだが・・・。」 既に空に近い瓶を取り上げて振ってみる。 「もうねぇぞ。」 「アラ?さっきは半分くらいあったのにねぇ。ゾロが味見に沢山飲んじゃったんだ。 じゃ、こっちを開けましょ。」 あれ?俺だけが飲んだのか?と言う疑問の答えが出ないうちにナミはキッチンの棚の後ろから封の切ってない瓶を取り出した。 「そんな良いもん、コックの奴んな所に隠してやんのかよ。しかも何でお前知ってる?」 「船の構造を考えれば空間構造の予測は付くのよ。頭は使わなきゃ。」 「へえへえ覚えとく。」 「じゃ、作って。」 「やっぱり俺かよ!」 開けたての酒瓶からの香りは独特の物がある。それに逆らえる酒飲みはいない。 「コックに作る前にちっと駆けつけの一杯と行こうぜ。」 既に駆けつけの四杯くらいのはずである事は二人とも突っ込まない。トクトクトク・・と心地よい音が流れグラスに琥珀に染まる液体がなみなみと注がれている。 「アラ、美味しいv栓を切ったばかりってのは良いわよね。」 「いけるな。」 これくらいではこの二人酔うはずもない。と二人とも確信している。 今度はナミの忠告に従って酒だけを暖めてみた。 それでも新鮮な木の香りを含んだ良い香りが漂ってくる。 中に割りほぐした卵を入れて混ぜてみる。 今度は少し綺麗に攪拌されて黄色になっている。 「なぁ、こんな感じ?」 ナミが飲んでみた。ゾロも飲んでみる。作ったのは弐杯分。味見は一人一杯ずつ。 「うーーん。もう少し卵の臭いがない方が飲みやすいんじゃないかなぁ?」 「どうする?」 「もっとお酒足してみようか?」 「足りないよな!」 どんどん卵に比して酒の量が増えていく。 「暖かいから美味しいんだけどどれも何となく違うみたいな・・・・そうだ!ラム酒でも出来るのよ。“エッグノック”って言ってね、卵に暖めたミルクとかクリームを混ぜてラムとかブランデーで。やってみようか。そっちの方が飲みやすいかもよ。」 冷蔵庫を覗き込んでナミはミルクを取り出し、ラムも片手に持ち出した。 「げっ甘そうな・・・」 「はいはい文句言わないの。まず卵をかき混ぜまぁす。あら、なんか足下がふわふわしてる。良い気分よね。」 ミルクを鍋にかけホットミルクにして 「最後にラムを少し・・・」 計量カップに傾けられたナミの手は酒の流れ出るままにラム酒を溢れさせ、零れた分は鍋の中にどくどくと流れ込んだ。相当きついラム酒の香りがする。 「良い匂いだ・・・・けど甘そうだな。」 「これは其処が良いのよ。」 何杯もの試作品が作られたが、どれも飲み干されたあげくに二人の臨時酒料理人の舌を満足させなかった。 “勿体ない”と言う意見は珍しく合致し失敗作は残らなかった。 いくら強い二人でもアルコールを熱して蒸気化した部屋で更に暖かい酒を呷り続けている。しかし酔っぱらいの常道として自分たちの足下手元のふらつきに気が付くはずもない。 「ところでこれさぁ、仕上がったらあんたが飲むのぉ?」 「いやぁ、コックが熱出したって・・・・・そういやお前昨日の夜あいつに何した?ん?」 「何よぉ人聞きの悪い。」 「ってことは、心当たりが思いっきりある訳だ。」 にやにやしたゾロの横顔がこれほど憎く見えることは少なくない。 嘘のふくれっ面が効く相手でもない。それに何となく話して聞かせたくなったナミはナミは腹をくくった。 「・・・・・・で?何があった?」 「キスしたの。」 「何っっっ・・・・・!」 「きゃぁお酒こぼさないでよぉ勿体なぁい!」 その声にゾロははっと鍋を見た。いきなり大量の酒をばらまかれた鍋をつまみ上げた。周囲には零れた酒がべとべと光っている。だが罪悪感などありはしない。 ゾロはまじまじとナミの顔を真横から見る。ナミは唇をとがらせながらもゾロの顔を見上げた。瞳と瞳はじっと絡んで見つめ合ってしまった。バツの悪い心地ながらゾロの視線はナミの唇に固定されそうになるのを必死にこらえていた。この下唇の方が若干ふくらみの強い唇が?コックと? 自分の妄想からはっと我に返って気が付いた。妙に納得して酒の鍋を横に置いてぽんと手を打った。 「・・・つまりナニか?『てめぇにキスされてうなされて熱が出た。』」 「違うわよっっ!!」 「ってー事だろうがよ。」 「違うもん。ほら、そっちの手、さぼらないでちゃんと卵混ぜてよね。」 小言でごまかさなくても良いじゃねぇか。ゾロは自分の下唇が突き出てしまうのがいつもにはない変な事には気が付かず、黙って鍋の中の卵をごりごり音を立ててかき回す。 「あんた妬いてんの?あんたにはしてあげようか?」 「あほか。そんなコックを寝込ます様なもんお断りだ。」 「あたしのキスで寝込むわけ無いでしょ。だって・・・だってキスしたのルフィだもん。」 「はぁ???」 「だから・・・」 ゾロのいない間に更にカードゲームは非常に白熱していたらしい。 金を賭けてサンジをとことんカモにしてスッカラカンにしたナミは絶対的勝利を確信して更にサンジを煽り立てた。 「サンジ君、次のゲームであたしに買ったらキスしてあげるわよ。でも負けたらレートは今までの三倍ねv」 「えーーナミさぁん俺、もう金無いよぉ。でもそうだなぁ、そのキス唇にしてくれるんだったら五倍の賭けでも乗っちゃうのに。」 「あらvいいわよ?キスと五倍の賭けね?」 「いいのっ?やったぁ!よぉし頑張るぞぉ!!ナ〜ミさんのキスvナ〜ミさんのキスv恋人のキスv」 ナミは余裕のはずだったろう。 ところがいきなりサンジが勝ったって訳だ。いかさまだったか偶然かはゾロには判らない。でも、女に甘いサンジが案外くせ者なのも知っている。 「嘘でしょう・・・」 「ナミさんv約束!約束!んん〜〜〜。」 唇を突き出すサンジに対して困惑した表情は一瞬で打ち消した。ナミは優しく甘い声と顔でサンジににじり寄ったのだ。 「約束、だもんね。」 頬を染めて潤んだ瞳でサンジを見上げた。 「でも・・・・・恥ずかしいからサンジ君目をつぶってくれない?お願い。もう心臓がどきどきしてるの、判る?顔なんか見られたら、サンジ君に触られたら・・アタシびっくりして逃げちゃだしちゃいそう。」 どきどきしているという胸に右手を乗せてそのふくらみを強調する。 「ああん、ナミさんってば可愛いっ!」 「お・ね・が・い。サンジ君v目を閉じて・・・・・。」 「んでサンジ君が目をつむってる隙に横で転がってたルフィの頭を持ち上げて首を伸ばしてサンジとキスさせたの。」 本人が知ったら首括りもんかもしれない。 「コックの奴それは・・・・」 「気が付いてないと思うけど。」 昨夜のあいつの態度を思い出してみる。妙に勝ち誇ったような顔でゾロを見たかと思うと浮かれ踊ったスキップが煩かった。そのまま朝を迎えるまでその調子だったか? 考えなくても判る。おそらく気は付いていまい。 「お前らしいというか阿呆らしいというか・・・・」 「賭けでキスなんて嫌よ。このあたしの唇を賭のネタにするなんて勿体ないもん。」 ふくれていたはずのナミの顔がすっと近づいてきた。ナミの方を見たまま動けないゾロの唇に一瞬触れて すっと去っていった。 「好きな時に、したい相手とするわよ?」 先ほどから重ねた酔いのせいか?ほんのりナミの頬が赤らんで見える。自分の頬も何となく熱を感じている。 ナミの口からは同じ酒の匂いがした。自分の口からも漂う同じ匂いは相手の唇の感触の甘さだけを残してじんじんさせる。 「酔ってんじゃねぇか?」 「あんたこそ。」 二人の距離はもう数センチ。 「酔ったせいにしとくか。」 「珍しく意見があったみたいね。」 「そんじゃ寝込ませて貰うとするか。」 「とろけるの間違いよ。」 そのころ船底にて。 男が唯一の瞳を開けた。じっと看病していたトナカイは歓喜のあまり病人に駆け寄った。 「サンジ!!大丈夫か?お前今もの凄くうなされてたぞ!!」 「あ・・・夢か・・・。ああよかった。っておまえこんな所で何してる?」 「何ってお前、熱出てるしうなされるし意識戻らないし、心配したんだぞ!」 「すまねぇすまねぇ。けど今見てた夢、もんのすげぇ嫌な夢だったぞ。」 「どんな?」 「台所にネズミが入るんだ。そいつが冷蔵庫の卵を食い散らかして精を付けてでかくなってあろう事かナミさんを襲うんだ。あああそうだナミさんだった。可哀想に・・。 けど俺は身体が動かなくって・・・。おい!まさかルフィの奴がナミさんに何かしたとか・・・。」 チョッパーはサンジのお腹の上に飛び乗りながら下のルフィを指さした。 「ルフィなら寝てるお前の顔に落書きするのも厭きたし暇だからってそこで寝てる。それに台所ならゾロがいるからネズミなら退治してくれるさ。」 「なんだとぉ!」 目の前に出された鏡を覗けば素敵な顔に仕上がっている。周囲にはウソップ工房にあるはずの絵の具が落ちている。サンジの唇は真紫に厚く塗られていた。 「ああ〜〜〜〜〜!よくもナミさんと熱いキスを交わした俺の唇にこんな事しやがってぇ〜〜〜!感触を忘れまいとこの後何も食わずに頑張る予定だったのに〜〜〜!!」 身を震わせたサンジはそれ以上に素敵な顔を寝ているルフィに描き始めた。拳骨と蹴りを使うと派手な色に顔が仕上がった。 「そういやゾロが?台所で何してる?」 「熱の出たお前に作ってくれるって『卵酒』。 でももの凄く遅いなぁ。できなかったか・・・それとも忘れて寝ちゃったとか」 「あいつが俺に何か作るだと??やべぇなんだか悪寒がする・・・。」 「なんだと!!??それはサンジまだ寝てなきゃ駄目だ!!」 チョッパーは先ほどサンジを埋め尽くしていた布団のありったけをサンジの上に積み上げるとその中にサンジを埋め込んだ。 「でも・・・そういやあのネズミの色は緑っぽかったような・・・・。まさか?」 サンジは慌てて床を離れようとした。 「まだ病み上がりなんだからお前は寝てなきゃ駄目だ!!」 「はなせ!チョッパー!」 「えい!麻酔!!」 チョッパーを振り払い布団を振り払い起きようとしたサンジはすうっとそのまま床に再び沈んだ。 無理矢理開けた口の中から足の裏まで全身を診察し直してチョッパーはようやく一息ついた。 「・・・・・・ふぅ。でも悪いところはなさそうだ。この調子じゃ多分熱の原因はナミにキスしてもらったおかげの知恵熱だな。ならもう一度寝れば大丈夫だ。」 チョッパーは自分の診断の的確さと患者の容態に満足した。 と同時にゾロが帰ってこない原因を考えると何故か悪寒がするのでせっかくのこの満足な日にいけないことは考えないことにした。 そのころキッチンにて。 卵の殻が山ほど。 転がった酒瓶が数本。 テーブルの上におおよそ空になったばかりのコップが沢山、ぬるくなった黄色い酒に原酒とラムとブランデーの臭いが部屋中に混ざっている。 テーブルの下に服が脱ぎ捨ててある。 幸せそうに眠っている男女も。 キッチンの主はまだこの光景を知らない。 |
end サンジ君ごめんなさい。 トナカイのために病気になってやって下さい。 だって不死身のゴーイングメリー号のメンツの中ではどう見ても不要なポジションの船医(断言) 研究もいいけどたまには臨床をさせてあげてね。 別窓として開いてますけど一応帰り道 home |