「ウチの船長なら怪物でも…!!」

チョッパーはその腕にホグパックを追い詰めた。

「サイボーグでも魔獣でもエロでもネガティブでも!!」

目は怒りに爛々と燃え上がっている。

「暗殺者でも泥棒でも!!」

チョッパーは巨大な人間型になっている。睨み方も口も大きくなる。真剣な瞳は濡れて輝くようだ。

「何だって従えられる!!!お前らみたいに物言わない……」



「チョッパー。カットよ。」
「え?」
横のロビンが首を横に振って溜息をついている。
「なんだよ。せっかくもの凄く良い感じに乗ってたのに。」
思わず言葉が漏れる。自分の役にぴたりと嵌れたと思ったのに。
「なんだよロビン?今本番撮影真っ最中だぞ?」




そう。ここは469話撮影現場。今、正にチョッパーは469話の名シーンの長セリフを回していた。



ロビンは両手を外に向けて開いて肩をすくめて左右に振った頭を止めた。
「ダメよ。いくら本音でも本番中にセリフを勝手に増やしちゃ。」

「え?おれ増やしてた???
 どのセリフか・・なぁ・・・・・!!」
チョッパーの口がはっと驚きの形になったまま固まった。

「確かに増えてるわ。・・哀しいわ。それが貴方の本音かしら?」
顔を背けて口元に手を添える。肩は震えて耐えて見える。だがその柔和に悲しみを伝えるロビンの声は真冬の深夜のように凍り付いていた。


「ロビンさん!」
「泣かないでください!」
スタッフが走り寄る中、俯いたロビンは少しだけ、視線をあげた。

ああ!!目が一切笑ってない!!


オレ!?
俺なの??
ああ!!!!!!!
「あんさつしゃ」と「どろぼう」っていっちゃった!!!!


がたがた震える足、頭の先から足の指先まで震えてる。
歯の根があわない。
体温が下がってくみたい。
どうし・・・・・・


「私は良いの。仕方ないわ。本当のことだもの。でも ナミちゃん に知られたら、ただではすまないでと思うのよ。」

ロビンが口元を覆う手が細い顔の半分以上を隠している。震える肩と俯いた首。細い肩。ナミも星も肩も細いけど、ロビンの方がしっとりと、柔らかい感じがするのは何でだろう?
ナミじゃない・・よな。ナミよりも、ロビンが傷ついてる。
どうして・・???


!!!


思い当たることが一つだけあった。他は考えられないよ!




ごめんよ ごめんよ ごめん。
オレ、知らなかったんだ。

そんなにロビンがオレのこと好きだったなんて。
これに答えないと漢じゃないよな!
ロビンはまだ怒ってるけど、ちょっと怖いけど。
ナミに聞かれてるよりはずっと良いよな!






チョッパーは根拠のない激情に駆られて震えるロビンの肩をがしっと掴んだ。ロビンはそっと顔を上げた。
二人が見つめ合う空間にロビンは共通の言語は見いだせなかった。
それよりも気になる視線が枠外から投げられている。



「おい監督?馴鹿、変じゃねぇか?」
メガフォンを握り高い椅子の上にいたウソップ監督兼俳優に大道具係兼俳優のフランキーが声をかける。
「え?そうか?」
「ああーーーー何つーか違う汗が出てるように思うんだけどな」
「汗?そうか?」
フランキーの声は何か苦々しげだ。

チョッパーは何かロビンに向かって言おうとしているが、そのフランキーにだけ向けてロビンが一瞬にやっと微笑んだ。


汗は出ないが腹の冷蔵庫がもっと冷え込む感じだ。

「おい、とっとと再開しろや」
ウソップ監督の椅子が倒れないギリギリの蹴られ方をフランキーにされて揺れている間に背後から声がかかった。
「って事で今のシーンからリテイク入りまーーす!」
「スタンバイーーいけるかチョッパー?」
ゾロとルフィがいつもと変わりない声で開始を告げる。
「は・・はい!」

と言いながらこのシーンの撮影はチョッパーの冷や汗と緩んだ生ぬるい微笑みが引くまで何度も撮影が繰り広げられ、ロビンのあきれた瞳がチラチラと大道具係に向いていたことに気がついたのは計時係のサンジの隣に座った脚本担当のナミの瞳の中だけだった。

















言い訳
469話でですねぇ。チョッパーのセリフ。女性陣に言葉がなくてアレ?と思ってしまったんですよ。
テーマはと聞かないで下さい。ごめんなさい、ただの馬鹿ネタなんです!!