日常 (フランキーとナミ)


「嵐が来たぞーーーーーー!」
チョッパーの声が通った。
「いらっしゃい」
ウォー ターセブンを出て初めての大嵐だ。今まで乗り合わせて体感したサニーの強度とフランキーが保証する船体の強さと機動力を試す絶好の機会とナミは空を見すえ 舌なめずりした。


「おいお嬢ちゃん!?良いのか?ロロノアの奴起きねぇぞ?」
甲板に走り出てきたフランキーの声が響きが 皆振り返った。

船の外は今まさに大嵐。
相変わらず読めないこのグランドラインの海の天候には船員の総力を持って当たるべきなこと は鉄則だけれどああ、この船の副船長というか剣士は今日もいつもと同じように甲板で寝っぱなしだ。
フランキーの大きな腕につながる拳が力を集約さ せている。

「ああーーそれねぇ!

・・いいのよっゾロの馬鹿が起きないならほっといて。」

あの、ナミが。
ル フィとゾロの間の本気の喧嘩に入り込める唯一の存在が。
特にそうじゃなくても自分以外の誰の働きの怠けも許さないナミがそうあっさり言ったのでフ ランキーは眼を剥いた。
ナミは働き者だ。限局的に。それはサンジもそうだしと馴鹿もそうだ。己の能力以外には無理はしない。自然と派生する助け合 いが何の負荷もなく引き出される。それはおそらくこの船長の、実際戦闘以外には何の役にも立たない船長の資質故と思われるが。
正直フランキーがこ の船に乗り込んで、日常における彼ら内の力関係の把握が徐々に出来つつある。日常ならばナミは最強だ。かつ厳しい。悪くはない。航海におけるその能力の高 さは戦闘時に舌を巻いた。これなら俺の船も預けられるとフランキーも絶賛している。
なのに?
いやロロノアには甘いのか?



「本 当に良いのか?」
心配そうなフランキーに向かいナミはあきらめ顔でそれでもあっけらかんとけらけら笑った。
「あーもーねーいいのいいの。 グランドラインに入ってわかったのよ、こいつが起きない時って何でかわからないけど最終的には絶対安全なの。今までずっとそう。たぶんこの脳が動物レベル なのよね。」
そう言いながらウソップに帆の角度の指示をとばし、また前の大気中を真剣にじっと見据えている。他の誰がみてもわからない風の動きと 大気圧を肌と目で測っている。ナミの理性は途切れる事がない。
「必要なときには何もしなくても起きるわ。その時はやっぱりそのタイミングでこいつ が要るの。んでそれはそれでなんとかなるのよね。っと・・・9時の方角から大きい風がくる!それに乗るからガフも揃えて!船の重心を左に下げる!船体は 15度で受けて!9時の方向よ!」
見事にナミの予測は当たりサニーは転覆どころか風に乗り嵐の圏外へ逃げ去る。操作の粗っぽさに対しても無駄なき しみ一つなく、船体に傷一つつけずに見事に海流を読み切って飛び出した。この指示の確実さは見事という他無い。フランキーが称賛代わりに口笛を吹くと、さ も当然とニヤッと笑ってナミは答えた。

「だからそいつはねーその倍、他で働かせるから大丈夫よ。」




次 の日には頭に大きなこぶを作られた男が浄水マシンを漕がされ、風呂の掃除と水汲みと水槽の水の入れ替えとみかんの木の堆肥作りの手伝いを文句も言わずさせ られていた。


「なるほどな、この船の微妙な辺りのヒエラルキーが何となくつかめてきたぜ」
「慣れとノリだがな。少なくと も最大の幸福で最大の苦行なんだからあのM男にはうってつけなんだが」
ロビンの手の中でサンジが煎れたアイスコーヒーの氷が溶ける音がカランとを おいしそうに響いてる。そのロビンも楽しそうに彼らをみている。ルフィとチョッパーとウソップは向こうでマストから下げたブランコに夢中だ。フランキーは ロビンの向かいでサンジからよく冷えたコーラを受け取った。


end

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