WJ430話「降りそそぐ追想の淡雪」

タイトルのやまとことばにはいつも後で泣かされる。

表紙へは「せめて月にいる先住民と巧くやってね。」


本当は何も書くことがないと思いました。
書かなくてもメリーが、尾田っちが語っている。
これ以上どんな言葉も児戯に等しいとしか思えなかった。




けどいまは自分なりのけじめとして言葉を並べようと思います。

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声がした。
さっきはクルーにしか聞こえない声だったけど今は聞こえない。

その声が必死だったときには世界随一の船大工には届いた。
だってメリーには彼が必要だったから。
その声は彼を動かして、メリーは礼を言って仲間の元へ駆けつけた。

だからその船大工には判る。
「もう眠らせてやれ」
だってその船はもう走れないことが判っていたから。
「俺は奇跡を見てる」
船の限界を船が引き出すなんて。
「こんなに凄い海賊船を見た事がない」
ルフィ達が本当の仲間だったと一番判ってる。
そしてその凄い仲間達は世界で初めて、フランキーと同じようにアイスバーグが望んでいたこと……大切な仲間を奪い返す事を成し遂げる凄い奴らだった。
「見事な生き様だった」
船大工だからこそ船の限界は判ってる。それでも船の情熱に突き動かされてしまった。

そしてルフィは初めての仲間の死を受け入れる。

仲間どころか新しくはどんなものの死も今まで描かなかったワンピースでの初めての死がメリーで。
その野辺送りは仲間と、作者と、読者の皆で送らないと。

それぞれの思いが、炎がつくった雪が溶けるときに一つ一つ思い起こされる。
それはそれぞれの心の中の想い出。きっと私達の心の中にもこの淡雪は降り始める。
溶け出して涙になる。

燃え行くメリーの姿とその声が重なってもう涙しかない。
皆それぞれに別れを告げるメリーの言葉が重くて涙が溢れてくる。


ありがとうメリー彼らとともに旅をしてくれて。
そしてありがとう。その旅に私達も連れて行ってくれて。

2006/10/07






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